ITエンジニアがうつ病で2回休職した話|原因は「激務」ではなく「やりがい不足」だった

はじめに

ITエンジニアとして働く中でうつ病を発症し、2回の休職を経験しました。本稿ではその経緯と過程、今思うことを綴ります。

結論から言うと、私が2回休職した原因は「激務」でも「人間関係」でもなく、 「やりがいの喪失」 でした。

「仕事が楽になったのになぜ病む?」と思う方もいるかもしれません。私自身も最初はそう思っていました。ですが、仕事量が減ることで「必要とされていない」「自分がいる意味がない」という感覚が強まり、それがじわじわと心を蝕んでいきました。忙しすぎても病む、暇すぎても病む。そんなケースが存在することを、この記事で知ってもらえたら幸いです。

自己紹介

SIerで顧客対応から要件定義、設計、実装、テスト、運用保守まで一気通貫でおこなっています。今の会社は7年目となり、主に金融系の顧客を相手に億単位のプロジェクトから数百万円くらいのプロジェクトまで様々な規模のプロジェクトを経験しています。

ワーカーホリックな性格があり、新卒の時からプライベートの時間も惜しまず技術探求・プログラミングをする癖がありました。

2020年のコロナ禍をきっかけに在宅勤務がメインとなり、独身生活も長く、自宅で1人で仕事をする日々が続いていました。

1回目の休職

元々2019年〜2022年頃は激務が続いていました。2019年頃はまだ残業の規制も甘く、毎日日を跨いで帰宅していました。2020年頃になり残業の規制が入り、月40時間に抑えるように指導が入りました。でも、仕事の量は変わりません。結果、短い時間で成果を求められるようになりました。人間、そんなにすぐ生産性が上がるわけもなく、上司からは毎日のように詰められていました。抽象的な指示が多い中、自身の作業工数の見積もりも正確に報告出来ず、毎回報告した工数を超過し、嘘つき扱いをされ、「いつまでならできるんだ!」と怒鳴られていた記憶があります。

そんな環境が続き、部長にもう限界であるという相談をしました。2022年9月のことでした。私はグループ(いわゆる課に近い単位です)を異動となり、上司を変えてもらいました。また、産業医面談を勧められ、その結果として精神科への通院を勧められました。グループの異動により、大規模プロジェクトから離れるようになって、かなり業務負荷は下がりました。

ある時、私はふと「自分ってこの部署に必要なのかな?」と感じるようになりました。激務に追われていたあの時、確かに大変だったが大きな仕事を任され、必要とされていた。今は小さな仕事ばかり。いつしかその感情は希死念慮という形に変わっていました。それを主治医に相談した結果、休職するようにということになりました。2023年11月〜2024年2月まで4ヶ月休職しました。

2回目の休職

私は復職を果たし、順調に仕事をしていました。最初は軽微なプロジェクトから。段々提案活動が中心となり、いろんな顧客に提案・見積もりをしていました。

そんな時でした。私に異動の辞令が出ました。2025年3月のことでした。私はAIを用いた新規案件を専門とする部署に異動となりました。今までの金融系中心のSIの部署とは異なり、描いていたキャリアプランも白紙となり、不安に駆られました。

2025年4月から異動しましたが、新規立ち上げ部署ということもあり、仕事はほとんどありませんでした。私はリードエンジニアのポジションについたため、技術調査とチームへの共有がメインの仕事でした。部署には受注出来ている案件がなく提案が中心となっていましたが、提案は私の仕事ではありませんでした。毎日ほとんど仕事がなく、たまに技術調査の仕事が単発で来るような状況でした。ここで1回目と同じ不安に駆られます。「自分って必要なのかな」「みんなは提案で忙しいのに自分は何をしているんだろうか」。そう思うようになり、次第に自分の存在意義を疑うようになりました。その感情は体調にも影響し、休む日も増えていきました。

私は主治医にそれを相談したところ、元の部署に戻ることを勧められました。上司に相談し、私は元の部署に戻りました。ですが、急に部署に戻ったところで仕事をすぐに割り当ててもらえるわけでもありません。次第に朝は起きられず、資料を読もうとしても頭に入ってこない、手も止まってしまう。最終的には過呼吸や理由のない涙などの発作が起こるようになり、主治医から休職を勧められるようになりました。

2回目の休職ということもあり、私は深く考えました。「私はこの会社にいてもいいのだろうか?」「迷惑をかけていないだろうか?」。先輩や同期に相談した結果、「一度長く休んだほうがいい」「どうせ辞めるにしても傷病手当金を貰ってから辞めてはどうか」「長く休んでよく考えてみてはどうか」とアドバイスを貰いました。私は休職し、実家に帰ることにしました。2025年7月から現在(2026年3月)に至ります。

【重要】休職中のお金問題(傷病手当金の落とし穴)

休職にはお金がかかります。多くの場合は傷病手当金を申請することで解決します。ですが、傷病手当金はすぐには振り込まれません。私の場合は申請してから初回振り込みまで、1回目は4ヶ月、2回目は7ヶ月掛かりました。その間もお金は掛かります。

私のケースでは親にお金を借りることでなんとかしました。金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査(2024年)」によると、20代単身世帯の貯蓄中央値は15万円、30代でも90万円程度です。難しいことは承知ですが、休職中にお金に困りたくなかったら、最低でも 100万円 は貯金しておくといいと思います。傷病手当金は早いと3ヶ月程度で支給されるという情報もありますが、個人によってまちまちです。私の場合、2回目の休職では自立支援医療制度などの関係から7ヶ月かかってしまいました。

私の経験から、申請してそのまま振り込まれるまで安心せず定期的に健保に問い合わせて進捗を確認しつつ、普段からいつ休職してもいいように最低でも100万円程度はいつ消えてもいい貯金としてコツコツ貯めておくことがいいのかなと思いました。

なぜ2回目も休職したのか

私の場合、よくある業務の過剰負荷や人間関係が直接の原因ではありませんでした。もちろん、間接的に影響している可能性はあります。

2回の休職に共通する点は 「やりがい」 だと思います。仕事を通して必要とされている、やらされているのではなく自分でコントロールして処理している。そんな感覚が私には必要なのだと思いました。

私には主体的に思考し、それが受け入れられ、チームを導き、プロジェクトをコントロールできる、そんな仕事が適しているのだと考えます。

私は良くも悪くもワーカーホリックな人間です。どうしても、仕事を通じないと自己実現の欲求を達成できないのだと感じました。世の中には、そういう人もいるのだと思います。

復職の判断

私は2回休職しましたが、2回とも復職という道を選びました。(執筆時点ではまだ2回目の復職はしていませんが、主治医から復職許可は出ており、現在会社と調整中です)

休職した場合、よくある選択肢は退職、転職です。休職理由が仕事量などの会社起因やパワハラなどの人間関係にある場合はその選択を私は否定しません。ですが、「やりがい」などの自己に原因がある場合はちょっと立ち止まって考えた方がいいと思います。

我々ITエンジニアの、特にSIerの仕事はプロジェクトによって仕事の内容はまちまちです。一時的な問題で転職という選択肢を選ぶとやりがいを感じられない度に転職を繰り返し、職歴に影響が出る可能性があります。

私は不安定な休職期間に突発的に転職するのではなく、まずは復職をし、生活を安定させた上で自分のキャリアプランを鮮明にさせることが重要だと考えました。私のようなやりがい起因で休職に至った人はキャリアプランが鮮明になり、そこで今の会社では実現できないなと判断出来た上で転職することをおすすめします。

2回の休職から気づいたこと

うつ病で休職というと、超残業、パワハラなどを想定する人も多いですが、やりがい不足というケースもあるということが一番の気づきでした。

正直一番面倒くさいタイプの原因だと思います。仕事量を増やしても病む、減らしても病む。自分でも扱いが難しいタイプの人間だと思います。でも、世の中にはそんな人間もいるのだということを知ってほしいと思いました。

一番重要なことはキャリアプランの鮮明化です。仕事にやりがいを求めて自己実現の欲求を満たしたいのであれば、どういうキャリアであればそれが満たされるのか。それを鮮明に描くことで、今の会社はそれを満たしてくれるのか、そうでなければ転職するという判断が容易になります。

うつ病になって休職し、業務量を減らされたという人は少なくないのではないかと思います。そんな経験をされた人は私と同じケースにないか、その考えの参考になれば幸いです。

私は現在、復職に向けて生活リズムを整えつつ、自分にとって無理のない働き方を模索しています。